厚生労働省発表
平成17年9月28日
厚生労働省労働基準局監督課
課長 大西康之
調査官 秋山伸一
中央労働基準監察監督官 大塚弘満
電話番号 03-5253-1111 (内線5544)
夜間直通 03-3595-3202

労働政策審議会に対する今後の労働契約法制
の在り方についての検討の諮問について


 近年、産業構造の変化が進む中で、就業形態・就業意識の多様化に伴う労働条件決定の個別化の進展、経営環境の急激な変化、集団的労働条件決定システムの機能の相対的な低下やそれらに伴う個別労働関係紛争の増加といった労働関係を取り巻く状況の変化が生じているが、現行の法律や判例法理による労働契約に関するルールについては、このような状況の変化に十分に対応できていないと考えられる。
 このような状況を踏まえ、平成15年の労働基準法改正の際には、労働政策審議会から労働契約に係る制度全般の在り方について建議がなされ、衆参両院の附帯決議においても同様の指摘がされている。
  今般、厚生労働省は、以上のような状況をかんがみ、今後の労働契約法制の在り方について、本日、労働政策審議会(会長 菅野和夫 明治大学法科大学院教授)に別添のとおり諮問した。


厚生労働省発基第0928001号

労働政策審議会
 会長  菅野 和夫  殿


今後の労働契約法制の在り方について(諮問)


 近年、産業構造の変化が進む中で、就業形態・就業意識の多様化に伴う労働条件決定の個別化の進展、経営環境の急激な変化、集団的労働条件決定システムの機能の相対的な低下やそれらに伴う個別労働関係紛争の増加といった労働関係を取り巻く状況の変化が生じているが、現行の法律や判例法理による労働契約に関するルールについては、このような状況の変化に十分に対応できていないと考えられる。
 このような状況を踏まえ、平成15年の労働基準法改正の際には、貴会から「労働契約に係る制度全般の在り方について、今後引き続き検討していくことが適当である。」との建議がなされ、衆参両院の附帯決議においても、「労働条件の変更、出向、転籍など、労働契約について包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進め」るべきことが指摘されている。
 こうした中で、厚生労働省においては、学識経験者の参集を求め、「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」(座長 菅野和夫 明治大学法科大学院教授)を開催し、今後の労働契約法制の在り方について検討を重ねてきたところであるが、研究会においては、平成17年9月15日に、労働契約に関する公正・透明な民事上のルールを定める新たな法律(労働契約法)が必要であることを主な内容とする報告書を取りまとめたところである。
 以上を踏まえ、厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)第9条第1項第1号の規定に基づき、今後の労働契約法制の在り方について、貴会の調査審議を求める。

平成17年9月28日

厚生労働大臣  尾辻 秀久



労働契約法制の検討に関する指摘


 労働政策審議会建議(抄)(平成14年12月26日)

I 労働契約に係る制度の在り方
 労働契約終了等のルール及び手続
(3)その他
 労働条件の変更、出向、転籍、配置転換等の労働契約の展開を含め、労働契約に係る制度全般の在り方について、今後引き続き検討していくことが適当である。


 労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(抄)
 (平成15年6月4日 衆議院厚生労働委員会)

 労働条件の変更、出向、転籍など、労働契約について包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進め、その結果に基づき、法令上の措置を含め必要な措置を講ずること。


 労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(抄)
 (平成15年6月26日 参議院厚生労働委員会)

 労働条件の変更、出向、転籍など、労働契約について包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進め、その結果に基づき、法令上の措置を含め必要な措置を講ずること。



「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」
報告書(ポイント)


労働契約法の必要性
背景
 労働条件決定の個別化
 経営環境の急激な変化
 集団的労働条件決定システムの機能の低下
 個別労働関係紛争の増加
 労働者の自律的な働き方に対応するために労働時間法制の見直しを検討する必要
→
 労使当事者が実質的に対等な立場で自主的に労働条件を決定することを促進し、紛争の未然防止等を図るため、労働契約に関する公正・透明なルールを定める新たな法律(労働契約法)が必要
 仮に労働時間法制の見直しを行うとすれば、労使が労働契約の内容を実質的に対等な立場で自主的に決定できるようにするための労働契約法が不可欠

労働契約法の基本的考え方
 労使自治の尊重と実質的対等性の確保  ・ 就業形態の多様化への対応
 労働関係における公正さの確保  ・ 紛争の予防と紛争が発生した場合への対応

労働契約法の性格
 労働基準法とは別の民事上のルールを定めた新たな法律
 履行確保のための罰則は設けず、監督指導は行わない
 強行的な実体規定のほか、手続規定や任意規定、推定規定なども活用
 労働基準法についても、労働契約に関するルールの明確化等の観点から見直しを行う

具体的内容
労働契約法
(1) 労働条件の設定の運用状況を常時調査討議し、労働条件の決定に多様な労働者の意思を適正に反映させることができる常設的な労使委員会制度を整備
(2) 労働契約の成立・変動・終了に関する要件と効果を規定
 採用内定、試用期間、配置転換・出向・転籍、懲戒、解雇、退職等のルールの明確化
 安全配慮義務、労働者の個人情報保護義務等の整備
 「雇用継続型契約変更制度」の導入
 解雇の金銭解決制度の導入の検討 等
(3) 有期労働契約の雇止めについてのルールの整備など有期契約労働者にも対応

労働基準法の見直し
(1) 契約期間の上限規制の趣旨が労働者の退職制限の防止に限られることの明確化
(2) 採用内定期間中の解雇予告制度の適用除外
(3) 労働条件明示や就業規則の記載事項・作成手続の見直し
(4) 第18条の2など民事的効力のみを有する規定を労働契約法に移行

トップへ